日本財団 図書館


ロデューサーの仕事のだいご味でございます。それができたら、こんなにおもしろい仕事はございません。
これは余談かもわかりませんが、例えば20世紀は物質の時代だと言われておりまして、じゃ、しからば21世紀は何だ、これは心の時代だと言うのだそうでございます。私どもプロデューサーの仕事は、やはりお客さまに喜んでいただくということですから、心に訴えかける仕事をさせていただいている。それは芝居が好きだから、昼間からほかの劇場の芝居を見ていても別にサボっているわけではない。これは普通のサラリーマンだったら、セールスマンがセールスしないでほかの劇場の芝居を見ていたら、これはサボりですけれども、プロデューサーは幸いそれができるわけですから、芝居の好きな人間にとって、そういうことをしながら月給をもらえるというのはありがたいことなんです。ですから、私の友達なんかは、おまえなんか遊びながら月給をもらっているみたいなものだ、こういう言い方をしますけれども、自分が観客に、あるいは聴衆という言葉もありましたが、観客に対してアートマネージメントをして、喜びを与えるという仕事が21世紀の仕事の1つだということをある人が言っていました。
ですから、そういうことをしている―役者もそうなんでしょう。役者も、やはり観客に喜びを与えるために演技をするわけですから、人気とか人気でないとかということはありましょうけれども、あの人の顔を見るのも嫌だという人は、その人が出ている芝居を見に行かないわけでありまして、その人が出ているのを承知で見に行くということは、興味があるから行くわけですから、その人がすばらしい演技をすれば、ひいきでなくても、ああ、うまくやったなということで感激をするわけでございます。
私の場合で言えば、実例を挙げれば、黒柳徹子さんが演じたマリア・カラスというオペラ歌手の芝居を銀座、セゾン劇場でやっていました「マスタークラス」―ジュリアード音楽院でマリア・カラスが生前教えた有様、それを描いたテレンス・マクナリーという人の芝居なんですけれども、マリア・カラスのイメージを黒柳徹子さんが持っているとは思いませんので、私の周りのマリア・カラスファンの人たち、オペラファンたちは、こういうものを頭から毛嫌いして見に行っておりません。
ところが、芝居そのものは非常によくできたものなので、一見の価値はあるんですけれども、プロデューサー側から見ると日本の観客の非常に不満なところでございまして、マリア・カラスに興味があるから、黒柳徹子がどうやろうがその芝居を見るというのがまず芝居好きの発想だと思うんですけれども、黒柳徹子がつけ鼻をつけて何か気持ちが悪いか

 

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION